部下に指示が伝わらない。「自分でやったほうが早い」と思った時点で、たぶん詰んでます
「これ、明日までにお願い」
そう言って渡した仕事が、翌日ぜんぜん違う形で返ってきた。
直す時間もないから、結局その場で自分が巻き取る。深夜にひとりで作り直す。
……これ、やったことないですか。
僕はあります。何回も。

ここポイントやで。これ、しんどいのは自分やねん。相手やなくて
いま僕はスタッフ約30人の会社をやっていて、その前はジムのインストラクターを20年弱やっていました。人にものを教えるのが、そのまま仕事だった人間です。
それでも、やりました。「説明するより自分でやったほうが早い」——このボタンを、何回も押してきました。
この記事は、そこから抜けるために僕がやっていることの話です。今日から使える言い回しを、3つだけ書きます。
「自分でやったほうが早い」が、いちばん高くつく
先に、なんでこれがまずいのかだけ短く書きます。

伝わらない → 自分でやる → 自分の時間が消える → 相手は育たない → また伝わらない。
この輪っかの中で、いちばんタチが悪いのが「自分でやる」です。その場では正しい判断に見えるからです。
締切が近い。説明する時間がない。自分でやったほうが確実。全部その通りです。
でもこれをやり続けると、1年後も同じことをやっています。しかも1年分、相手は成長していません。
抜け方は、才能でも根性でもありません。言い方の順番を変えるだけです。
① 数字だけを、上から言わない

いちばんやりがちなやつです。
Before
「今月あと5件な。よろしく」
これで人が動くことは、まずありません。
動いたとしても続きません。こっちの言うことを聞いているだけの状態になるので、結局こっちが指示を出し続けなあかんようになります。
なんでかというと、数字だけ渡されても、何をどう変えればその数字になるのかが分からないからです。渡されたほうは「で、どうしろと」で止まります。
After
「今月あと5件やんな。先月は問い合わせから商談に進むところで落ちてたから、そこ一緒に見ようか」
長くなりました。でも、このほうが相手は動きます。
数字は「結果」です。結果だけ渡しても、行動は変わりません。変えるべき行動まで一緒に置いてはじめて、指示になります。
②「今こうやんな、だからこうやで」の順で話す
これが3つの中でいちばん効きます。順番の話です。

Before
「この資料、作り直しといて」
After
「この資料、いま数字の根拠が入ってないやんな。だから相手に聞かれたときに答えられへん。そこだけ足しといて」
違いは何かというと、先に「いまどうなっているか」を相手と共有していることです。
いきなり「作り直して」から入ると、相手の頭には「なんで?」が残ります。その「なんで?」を抱えたまま作業するので、また同じところで外します。
順番を変えるだけで、指示が「命令」から「納得」に変わります。
そしてここが大事なんですが——納得して動いた人は、次から自分で考えます。命令で動いた人は、次も指示を待ちます。
この差が1年積み上がると、とんでもない差になります。

ここポイントやで。納得して動いた人は、次から自分で考えるようになる
③ 詰める前に「しんどかったな」を言う

ミスが出たとき、うまくいかへんかったとき。
Before
「なんでできひんかったん?」
これ、原因を聞いているつもりでも、相手には責められているとしか届きません。
責められた人間は守りに入ります。守りに入った人間に、こっちの話は入りません。言い訳を考えることに頭を使ってしまうからです。
After
「しんどかったな。……で、どこで詰まった?」
先に相手の状態を、言葉にして返してあげる。それから中身に入る。

ここポイントやで。順番を変えるだけ。優しさやのうて技術の話です
たったこれだけで、その後の話の入り方がぜんぜん違います。相手が守りを解くからです。
念のため書いておくと、自分を押し殺せという話ではありません。言うべきことは言います。順番の話です。
これは優しさやのうて、技術やと思っています。
3つとも、今日から使えます
まとめると、これだけです。

ここだけ確認
明日からいきなり3つ全部やらんでもええです。ひとつからで十分やと思います。
ただし、ひとつだけ先に言っておきます。コミュニケーションは積み上げでしか動きません。1回うまい言葉をかけたから明日から変わる、みたいなものではないです。
逆に言うと、今日から始めれば、今日から積み上がります。
ちなみに僕自身、若い頃は人の気持ちがよく分かりませんでした。分かるようになってきたのは30歳くらいです。生まれつきの才能やないと思っているのは、そういう理由です。

ここポイントやで。できてる人が言うてるんやなくて、後から分かった側の話や
僕が実際に抱え込んで、詰んだ話
偉そうに3つ書きましたが、僕自身がいちばんやらかしてきました。
何をやったかというと、売上を上げるためのマンツーマンの指導を、自分でやりすぎたんです。
1対1は、ちゃんと効く。だから止まらなくなる
厄介なのは、マンツーマンは実際に効くことです。
一人ずつ、目の前に座って、その人のやり方を見ながら教える。これは伝わります。だから手応えがあるし、やった甲斐もある。
でもそれを、いっぱいやりました。効くから、次の人にもやる。その次の人にもやる。
人数分だけ、自分の時間が要る
当たり前ですが、1対1は人数分の時間がかかります。
10人おったら10回ぶんです。自分の体は1つしかないので、どこかで必ず無理が出ます。
しかも、この状態には終わりがありません。教えた人が別の人に教えられるようにならん限り、ずっと自分が回り続けることになります。
ここだけ確認

効くからやめられへん。これがいちばんタチが悪いところです
「自分でやったほうが早い」の正体
いま振り返ると、あれは「早い」んやなくて「確実」やっただけでした。
自分でやったら、その1件は確実に片付きます。でも次の1件も、また自分がやることになります。
人に渡すのは、最初は遅いし、うまくいかんこともある。でも渡した先は、次から自分が動かんでよくなります。
その差が効いてくるまでに時間がかかるから、目の前では「自分でやったほうが早い」に見えてしまうんやと思います。
それでも伝わらないときの話

正直に書きます。上の3つをやってきて、それでも伝わらんときはあります。
理由のひとつは、自分がやっていることを、言葉にして人に教えるのは別のスキルやということ。僕も感覚でやっている部分が多いので、体系立てて渡すのはうまくできている自信がありません。
もうひとつは、相手の側の問題です。伝わらへんケースの多くは、その人が自分の心をコントロールできていないときやと感じています。焦っている、いっぱいいっぱいになっている。そういうときは、何をどう言っても入りません。
ここまで来ると、こっちが言葉を工夫してどうにかなる範囲を超えています。
そうなったとき、外の仕組みを使うという選択肢が出てきます。
ただし、これはお金がかかる話です。実際に僕がその金額を見て「出すか、出さんか」を本気で考えた記事があるので、興味があればどうぞ。
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まとめ

ここだけ確認
60点でええから、まず動く。明日、ひとつだけ言い方を変えてみてください。

