【書評】木下勝寿『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』——広告費を「なんとなく」出してる人へ
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Web広告を出したことがある人に聞きたいんですが、その広告費、「なんとなく」で出してませんか。
正直に言うと、マーケティングは僕の苦手分野です。大阪で物販の会社を6年やっていますが、ここだけは最後まで自分のものにできませんでした。
数字を見ることはできます。でもそれを見て何をどう直したらええかが分からへん。結局、苦手なままにしておくのがいちばん高くつくと気づいて、いまはマーケティング担当のスタッフに任せています。
この本を読んだのは、自分が実行するためやありませんでした。任せる相手に「何をどう見てほしいか」を説明できるようになるためです。
著者は木下勝寿さん。北の達人コーポレーションの社長で、自社商品をWeb広告で売り切ってきた人です。広告費を自分の財布から出してきた人が書いてる、というのがこの本の説得力の 源 です。
この本の骨子——広告は「2つの層」でできている
ここだけ確認
株式投資で使われる言葉を、広告に持ち込んだ形です。
そして片方だけやってる人が大半で、両方できて初めて広告は当たる、というのがこの本の主張です。83の方法が載っています。
「広告運用者」と「コピーライター」が分業してる問題
言われてみたら、世の中の役割分担がそうなってます。
広告運用の人は数字の調整が得意で、コピーの人は言葉が得意。でも両方を見て「いまどっちがボトルネックか」を判断する人がおらん。
だから訴求がズレてるのに、入札調整だけが延々と続くということが起きます。

広告代理店に任せてる人ほど、この構図に心当たりがあるはずです
僕に効いたのは「順番」の話
数字をいくらいじっても、言うてる中身がズレてたら当たりません。
クリック単価を1円下げる工夫より、「誰のどんな悩みに刺す広告なのか」を作り直すほうが先。この順番が、この本の背骨です。
これは掛け算やから、片方がゼロやと全部ゼロ
ここが大事なところで、2つは足し算やなくて掛け算です。
訴求が的外れなら、配信をどれだけ最適化してもズレた広告が安く大量に配信されるだけです。効率よく外してる状態になります。
逆に、めちゃくちゃ刺さるコピーを作っても、届く人数が10人やったら10人ぶんの成果にしかなりません。
この順番を知ってるだけで、広告が当たらんときに見る場所が変わります。

数字は嘘つかんけど、数字だけ見てても答えは出てこんのですよね
「どっちの層で外してるか」を切り分ける
広告が当たらんとき、原因は2つに1つです。
ここだけ確認
これを切り分けずに「広告は効かん」と言うてる人が、いちばん損してます。
切り分ける目安
ざっくりですが、こう見ると当たりがつきます。
ここだけ確認
真ん中がいちばん多いです。そしてそこは入札をいじっても永久に直りません。
広告だけの話やない、というのが本当の価値
この本を読んで一番よかったのは、この2層構造が広告以外にも使えると気づいたことでした。
商品ページも、営業資料も、ブログの記事も、「誰に何を言うか」の層と「どう届けるか」の層でできてます。
ブログで言うと
SEOの技術的な話——見出しの付け方、内部リンク、表示速度——これは全部テクニカルです。
でも「誰のどの悩みに答える記事なのか」が決まってなかったら、SEOをどれだけやっても読まれません。
このブログの記事も、まず「誰のどの悩みか」から決めてます。キーワードから入らずに、人から入る。この本の順番と同じです。
商品ページで言うと
ECの商品ページでいうと、キーワードの入れ方や価格調整はテクニカル。1枚目の画像と最初の一文で何を言うかはファンダメンタルズです。
後者が弱い商品は、広告を止めた瞬間に売れんくなります。広告で無理やり見せてただけやからです。

広告を止めても売れる状態を作れてるか。そこが分かれ目やと思ってます

「誰に」を絞れん人が、いちばん多い
ファンダメンタルズの中でも、最初でつまずくのが「誰に」です。
広告を出すとき、たくさんの人に見てほしいから、つい対象を広げます。「40代〜60代の男女」みたいな設定です。
でも、そうやって広げた広告は誰の心にも引っかかりません。「みんなに向けた言葉」は「誰にも向いてない言葉」やからです。
セカラボで実感したこと
このブログも、最初は「40〜50代の男性向け」という広い設定でした。それやと記事が書けません。書いても、ぼやけます。
いまはもっと狭く決めてます。たとえばヒゲ脱毛の記事なら「ヒゲ脱毛を考えてるけど、何から調べたらええか分からんまま止まってる40代」です。
ここまで狭めると、書くことが勝手に決まります。広げると書けなくなって、狭めると書ける。これは広告のコピーでも記事でも同じでした。

「誰に」を狭めるのは、市場を捨てることやなくて、言葉を尖らせることです
広告費の上限は「1件いくらまで出せるか」から決まる
テクニカル側で、この本を読んで整理できたのがここです。
広告費を「今月いくらまで使うか」で決めてる人は多いはずです。僕もそうでした。でも本来は逆です。
ここだけ確認
この順番で考えると、広告費に「今月いくら」という上限は要らんくなります。1件あたりが合ってるなら、出せば出すほど利益が増えるからです。
逆に1件あたりが合ってへんのに予算だけ絞っても、赤字が小さくなるだけで黒字にはなりません。
ここは同じ著者の『売上最小化、利益最大化の法則』とつながってる部分です。商品ごとの利益が分かってへんと、広告の上限も決められません。
2冊セットで読むと、効きが変わる
実際に読んでみて思ったのは、この本は単体やと半分しか使えんということです。
広告の判断は「1件いくらまで出せるか」が分かってて初めてできます。そしてその数字は、この本には書いてません。利益の本のほうに書いてあります。
ここだけ確認
逆の順番で読むと、たぶん消化できません。「で、いくらまで出してええの?」が最後まで分からんままになります。

広告の本やのに、先に読むべきは会計寄りの本。ここは正直、意外でした

外注や代理店に頼むときも、この2層で話すと通じる
これは本に書いてあることやなくて、使ってみて分かった副産物です。
広告を人に任せるとき、「成果が出てない」だけ伝えても何も進みません。言われた側も、どこを直したらええか分からんからです。
でも「クリックは取れてるので、テクニカルは問題ないと思ってます。訴求のほうを2案作ってもらえますか」と言えたら、話が一気に具体的になります。
共通言語ができると、責任の所在もはっきりする
この2層で分けると、誰が何を担当してるかが自然と決まります。
訴求はこっちで決める、配信はそっちに任せる。そう決めておくと、当たらんかったときに「どっちの問題か」で揉めません。
外注ディレクションをやってる人にも、この切り分けはそのまま使えます。

「なんとなく効いてない」を、切り分けられる言葉に変える。それだけで会話の質が変わります
広告を出してない人が持ち帰れること
ここまで広告の話ばかり書きましたが、広告を1円も使ってない人にも効く部分があります。
それは「売れへんとき、どこを疑うか」の順番です。
ここだけ確認
メルカリでもBASEでも、店頭の商品でも同じです。「売れへん」を1つの問題として扱ってるうちは、手の打ちようがありません。
3つに割ると、次にやることが決まります。1番なら見せ方を変える。2番なら説明を変える。3番なら値段か原価を触る。
この順番だけでも、本を1冊読んだ価値はあります。

「売れへん」は問題やなくて、症状です。原因を切り分けんと薬が選べません
苦手な分野の本は、「自分がやるため」に読まんでええ
これは本に書いてあることやなくて、この本を読んで一番はっきりした自分の使い方です。
マーケティングが苦手やと分かったとき、選択肢は2つありました。自分でできるようになるか、できる人に任せるか。
僕は任せるほうを選びました。マーケティングのスタッフを雇って、この本で得た知識をそのまま渡しました。
任せるにも、共通の言葉が要る
ただ、丸投げでは任せられません。「なんかいい感じにやっといて」では、出てきたものを評価すらできないからです。
必要なのは「何を見てほしいか」を説明できる程度の理解です。この本の2層構造は、まさにそこに効きました。
自分で運用はできんけど、どっちの層の話をしてるかは分かる。そこまで来れば、任せられます。
苦手を克服するより、渡すほうが速い
40代を過ぎると、苦手を克服する時間が惜しくなります。いまから広告運用を覚えても、専門でやってきた人には勝てません。
それより得意な人に渡して、自分は判断だけする。そのために本を読む、という使い方があってええと思ってます。
本は自分が実行するためだけのものやありません。人に渡すために読む本も、あります。

苦手なままにしておくのが、いちばん高くつきます。任せるための勉強はしといたほうがええです

正直に書くと、読みにくいところもあります
いい本ですが、2つ注意点があります。
1つ目:83個は、通しで読むと多い
項目数が多いので、最初から最後まで読み通すと、途中でしんどくなります。
僕はいま困ってるところだけ拾い読みする使い方に落ち着きました。手元に置いて、広告が当たらんときに開く。辞書として使うほうが向いてます。
2つ目:ある程度やってから読むほうが効く
広告に一度も関わったことがない人が読むと、たぶんピンときません。
「入札を調整しても当たらん」という失敗を経験してから読むと、刺さり方が全然違います。先に失敗しといたほうがええ本です。
誰向けの本か
- Amazon・楽天・自社ECで広告を出してる人。媒体が違っても構図は同じです
- 広告代理店に任せっぱなしで、成果の判断基準を持ってない人
- 広告費を増やしても売上が比例して増えへん、と感じてる人
- ブログやSNSをやってる人。「誰の何に刺すか」は同じ話です
逆に特定の広告媒体の操作手順を知りたい人には向きません。管理画面の使い方は載ってません。考え方の本です。
同じ著者の本との関係
木下さんの本は役割が分かれてます。この本は「売り方・広告」の担当です。
広告を実際に出してる人以外は、後回しでいいと思います。まずは時間術か利益の本のほうが、誰にでも効きます。

書籍情報
『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』木下勝寿(実業之日本社)
書籍
まとめ
広告の数字に強くなる本はたくさんあります。「その前に何を言うか」から順番に扱ってくれる本は、意外とありません。
広告費を出してる人は、金額の大小に関係なく手元に置いといて損はないです。当たらんときに開く本として。
同じ著者の本
▶ 『売上最小化、利益最大化の法則』——月商自慢が虚しくなる本
▶ 『時間最短化、成果最大化の法則』——「ピッパの法則」だけでも元が取れる
▶ 『「悩まない人」の考え方』——悩みを「作業」に変換する本

