【書評】木下勝寿『「悩まない人」の考え方』——悩みを「作業」に変換する本
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40代を過ぎると、悩みの種類が変わってきます。
若いころは「できるかどうか」で悩んでました。やり方が分からん、力が足りん。そういう悩みです。
いまは違います。人のこと、金のこと、この先のこと。やり方は分かってるのに、考えても答えが出ないやつが増えました。
経営をやってると特にそうです。悩んでる時間がいちばん高くつきます。その間、判断が全部止まって、会社も止まるからです。
この本は「悩むな」とは言いません。悩みを「作業」に変換する手順が30個並んでいる本です。
著者は木下勝寿さん。北の達人コーポレーションの社長で、経営者として判断し続けてきた人が書いています。

この本の骨子——悩みは「混ざってる」から動けない
悩みの正体は「事実」と「解釈」がごちゃまぜになった状態。だからまず2つを分ける。事実に対してはやることを決める。解釈は捨てるか、置いておく。その分解のパターンが30個のスキルとして載っている。
大事なのは、精神論やなくて手順の本やということです。ここが類書と一番違います。
「気にするな」では、誰も気にせんようになれへん
悩んでる人に「気にするな」と言っても、無理です。気にするなという指示は、実行できません。やり方が入ってないからです。
この本は、そこに具体的な手順を置いてきます。紙に書き出す、分ける、こっちだけ扱う——手が動く形になってる。
だから、いわゆる自己啓発が苦手な人でも読めます。気合いの話が出てきません。

「前向きに考えよう」やなくて「この順番でやってみ」。そのほうが助かります

僕に効いたのは「解決」やなくて「対処」でええ、という話
答えの出ない問題を、解決しようとするから止まります。
この本の考え方は、解決できない問題は「対処」に切り替えるです。問題そのものは消えてなくても、今日の自分が何をするかは決められる。そこだけ決めて、前に進む。
スタッフのことで悩んでるとき
たとえば「あのスタッフのやる気をどうにかしたい」という悩み。これは解決できません。人の気持ちは、こっちが動かせるものやないからです。
でも対処はできます。任せる仕事の量を変える。話す回数を増やす。役割を変えてみる。どれも「やる気」そのものには触ってません。触れるところだけ触ってる。
触れんものを動かそうとしてる限り、ずっと悩みます。触れるところに切り替えた瞬間、それは作業になります。
言われたら当たり前です。でも悩んでる最中って、解決できるまで動かれへん気がしてるんですよね。「対処でええ」と言われるだけで、手が動き出します。

「悩む」と「考える」は別もんです。考えるは前に進む。悩むはその場で回る
「事実」と「解釈」を分ける、が意外と難しい
本の中心にある手順ですが、やってみると難しいです。自分が事実やと思ってることの大半が、実は解釈やからです。
ここだけ確認
しんどいのは、事実やなくて解釈のほうです。2割落ちたという数字自体は、ただの数字です。
そして事実に対してはやることが決まります。原因を調べる、在庫を絞る、広告を見直す。作業になる。
解釈のほうは、いくら考えても作業になりません。「みんな不安に思ってるはず」は、確かめるまで分からんし、確かめたら事実になります。
紙に書き出すと、比率が見える
実際にやってみると、頭の中を占領してたのはほとんど解釈のほうやった、ということが分かります。
事実は3行くらいしかない。残りは全部、まだ起きてないことの心配やった。これが見えるだけで、かなり軽くなります。
夜に悩むのを、やめられるわけやない
正直に書きますが、この本を読んだら悩まんくなる、ということはありません。
僕もいまだに、夜に思い出して考え込むことがあります。そこはあんまり変わってません。
変わったのは悩んでる自分に気づくのが早くなったことです。「あ、いま解釈のほう考えてるな」と分かる。分かったら、そこで止められます。
ゼロにはならんけど、長さが短くなる。実感としてはそんな感じです。

悩まん人になるんやなくて、悩んでる時間が短い人になる。そのほうが現実的です
経営者の悩みは、相談する相手がいない
もう1つ、この本を必要とした理由を書いておきます。
会社をやってると、悩みを相談できる相手が、だんだんおらんくなります。
スタッフには言えません。不安にさせるだけやからです。家族にも言いにくい。心配をかけるだけで、解決はせんからです。同業者にも、内側の数字の話はできません。
結果、自分の中でぐるぐる回すことになります。これがいちばんよくない。
だから「手順」が要る
相談相手がおったら、話してるうちに事実と解釈が勝手に分かれます。「それ、ほんまにそう決まったん?」と聞き返してもらえるからです。
相手がおらんのやったら、その役を手順にやらせるしかありません。この本が渡してくるのは、まさにその手順です。
紙に書き出すというのは、自分で自分に聞き返す作業や、と思ってます。頭の中では絶対にできません。書き出した瞬間に、他人の目で見られるようになるからです。

一人で判断する立場の人ほど、こういう道具が要ると思います
「決めきる」ことが、いちばんの対処になる
この本を読んで、自分の中ではっきりしたことがあります。
悩みがしんどいのは、答えが出てないからやなくて、決まってないからやということです。
不正解でも、決まってさえいれば人は動けます。動き出したら、悩んでる暇がなくなる。決めてへん状態がいちばんしんどいんです。
60点で決めて、あとで直す
うちの会社には「60点でええから、まず動く」という考え方があります。この本の「対処」の話は、それとほぼ同じところに着地します。
100点の答えが出るまで待つと、その間ずっと悩みを抱えたままです。60点で決めてしまえば、そこから先は悩みやなくて改善の作業になります。
同じ問題でも、決める前と決めた後では、扱いが変わる。これがこの本のいちばん実用的なところやと思ってます。

決めた瞬間に、悩みが「やることリスト」に変わります
40代・50代に効く理由
この本を人生後半戦の話として読むと、もう1つ見えてくることがあります。
この年代の悩みは、答えが出ないものが多いということです。
ここだけ確認
全部、解決できひんやつです。若い頃の「勉強したら解決する」タイプの悩みとは種類が違います。
だから「解決やなく対処」という切り替えが、この年代にいちばん効きます。
介護は解決できませんが、いま調べておくことは決められます。体力は戻りませんが、今日歩くかどうかは決められます。
人生後半戦は、悩む時間がいちばんもったいないです。残ってる時間のほうが、若い頃より短いからです。
「悩む」を減らす一番の方法は、決める回数を減らすこと
これは本に書いてあることやなくて、読んだあとに自分で足した工夫です。
悩みの手順を覚えるのも大事ですが、そもそも悩む場面を減らすほうが早い、と思うようになりました。
ルールにしてしまえば、悩まんで済む
毎回考えてることの多くは、本当は毎回考えんでええことです。
ここだけ確認
先に1回だけ悩んでルールにしておけば、あとは悩みません。同じ形の悩みが月に10回来るなら、10回悩むか、1回で済ますかの差です。
この本の「事実と解釈を分ける」も、結局は毎回やらんでええようにするための型やと思ってます。型を持つというのは、そういうことです。

同じことで2回悩んだら、それはルールにするサインやと思ってます
正直に書くと、合わん人もいます
2つ書いておきます。
1つ目:ドライに感じる人がいるはず
この本のやり方は「感情を、扱えるものと扱えんものに切り分ける」という発想です。
合理的で効きますが、いま本当にしんどい人にとっては、冷たく感じる可能性があります。「そんな簡単に割り切れたら苦労せんわ」と。
ある程度、頭が動く状態やないと使えません。本当にしんどいときは、まず休むほうが先です。
2つ目:30個は、やっぱり多い
同じ著者の他の本と同じで、項目数が多いです。全部やろうとすると1個も定着しません。
いま自分が悩んでるやつに使えそうな1個だけ選ぶ。それでいいと思ってます。

誰向けの本か
ここだけ確認
逆に気持ちに寄り添ってほしい人には向きません。慰めてくれる本やなくて、やり方を渡してくる本です。
同じ著者の本との関係
木下さんの本は役割が分かれてます。この本は「メンタル・判断」の担当です。
個人的には、時間術の本とセットで読むのがおすすめです。
時間術の本は「やると決まってる仕事を速くする」話。この本は「やるかどうかを決められへん状態」を扱ってます。決められへんかったら、速さは意味を持ちません。

書籍情報
『「悩まない人」の考え方』木下勝寿(ダイヤモンド社)
書籍
まとめ
悩みは消えません。でも、悩みを「次にやること」に変換する速さは、練習で上がります。
その練習メニューが30個載ってる本や、と思ったら分かりやすいです。
解決できひんことは、対処でええ。それだけ持って帰っても、じゅうぶん元は取れます。
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